Tag: 成底ゆう子

生きている歓び

私はひとり ただひとり 込み上げるこの力は 生きている歓び 街の中にいても 海からの便り 風が運んで来る ふるさとの匂い 固まって蓋をした 心溶け出す 誰もみな それぞれの 大切な意味があって 産まれてきた 風よ吹け 空高く歌え 価値の無いいのちなんて ただひとつもない 雨が降り虹が出て 散る花咲く花 小さな虫の羽音 奇跡の営み 最高の瞬間は いつも今この時 私はひとり でもひとりじゃない 無数のいのち繋がって 今ここに立っている 誰もみな それぞれに つまずいて立ち上がって ...

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光と風の島

海は空を抱きしめ 燃える太陽 ゆらりゆれるサンゴ礁 きらめく世界 胸に寄せる 波のささやき 肩をつつむ 風のぬくもり 見えないけど きこえるよ やさしい風が 風の糸が織りなす 花の輝き 土の香り忘れない 遠くにいても 心染める はるか島唄 あかね空に ひびく三線(さんしん) 風のこえが きこえるよ ひとりじゃないよ 時を越えて 想い出たちが いつもそばで 微笑みかける 見えないけど きこえるよ 光と風が 光と風が

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音がえし

青い海と山の緑に花々 南風吹く島で わたしは生まれた 小さな村は 誰もが親がわり 笑顔に囲まれて 育ってきた ありがとう ありがとう いつもやさしさをくれた うたを歌いつづけること それがわたしの音がえし あの頃 寝転がっては星を眺めて いろんな夢を いくつも いくつも描いたね 制服のまま 防波堤に座って 海渡る貨物船を ずっと見つめてた ありがとう ありがとう ここで夢が生まれた うたを歌いつづけること それがわたしの音がえし あの子の家や公園 毎日通ったお店 大好きだった場所は もうないけれど ありがとう ありがとう 景色は変わっても ありのままの自分に戻れる場所 ここはふるさと ありがとう ありがとう この島に生まれて うたを歌いつづけること それがわたしの音がえし ありがとう ありがとう この島に生まれて ありがとう ありがとう これからわたしが音がえし ...

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赤瓦の家

てぃだに焼けた赤瓦 囲う石垣に咲く花々 門に並んだシーサーと 庭のフクギに憩う鳥たち 幼い頃に住んでいた 古い赤瓦の家 開けた作りの平屋の中に 灯りをつける やさしい風 三線の音に みんなが踊れば 真似して踊った 夏の夜 海に向かう坂の下 ポツンとあった赤瓦の家 あれから月日が過ぎた今 周りには連なる新しい家 ひとり 跡地に 来てみれば 崩れた石垣があるだけ 赤瓦の家はもうないけれど 咲いているのは 愛しい風 蚊帳をつって 布団並べて その真ん中で にぃにぃと眠る 赤瓦の家はもうないけれど いつもそばで 微笑んでいる 寄せる島唄 月のぬくもり 星の輝き 朝の光 島人心 わしららん

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いつもひとり 畳の部屋で 囲碁を打っては お酒を飲む 小さい頃は 遊んで欲しくて 膝の上で 眠ったことも 大人になると あなたを 遠ざけるようになっていった 目も合わさず 口もきかず たばこの匂いが 嫌だった 曲がったことがきらいな人で あなたはいつも厳しかった 口うるさいあなたが 煙たくて ぶつかってばかりだった わたし 近づきたくて 近づけない あなたから 離れた 東京で暮らすわたしに あなたは会いに来てくれた 待ち合わせの池袋駅 行くかどうか迷っていた おしゃれなカフェに連れていった 落ち着かない様子のあなた 強い訛りで話すから 周りの目がとても気になった 小銭を集めて買ってくれた 渋い茶色の腕時計 わたしとの距離を縮めたいと願う せいいっぱいのそのやさしさ それでも 素直になれなくて そのまま捨てた 身体が弱くて 病気がちな わたしが夜中に熱を出すと 母の隣であたふたしては 頑張れよと 頑張れよと 孫をあやす目尻のしわ 増えた白髪 痩せた頬 言えなかった言葉がある 今 あなたに 伝えたい 今 あなたに ありがとう

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