椿
だんだん 白く儚くなる瞳の奥 どれだけの喜びと悲しみが刻まれているのでしょう だんだん 弱っていく体とは裏腹に きっと心は私よりも強いから 会うたびに私も生きる意味を探すの 今日ここで見つけた想いはいくつありましたか? 今日も明日も明後日も 同じ場所で同じ風 ばあちゃんの樹が伸びちゃって その木陰が守ってくれる春 「元気で長生きしてね」とはもう言いません でもね もうすぐあなたと観れそうな夢があるの 椿の花びら落ちるまで 何度会えるだろう 丸い背中 空の色を教えて 初めて母を抱いた日の 私は摩子じゃないんだよ、寂しいわけじゃない きっと 名前すら忘れちゃうのに 振り絞った力で吐く言葉 「曲、お前の曲...」 それだけを覚えていたんだ カーテン越しに泣く ずっと側で追いかけていたなんて 「あと10年は好きなことをさせてやれ」と母に叱り “6/21嬉しい日だ。よく頑張った!”の太い文字 そんなの今更知ったって どんな音に変えて返せばいい? 10年もひとりで生きた手が こんなに小さくて優しいなんて ...
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